業務で使う生産性ツールといえば「Word」「Excel」に代表される「Microsoft Office」が代表的だが、この市場を取り崩すために10年以上戦っているのがGoogleのクラウドサービスだ。人気のメールサービス「Gmail」を筆頭に、カレンダー、ドキュメント、ストレージなど拡充を重ね、2016年にそれまでの「Google Apps」から「G Suite」として再出発した。
G Suiteは中堅や小規模企業、学校などに強いと言われてきたが、最近では全日本空輸(ANA)、消費財大手のColgate-Palmolive、小売の仏Carrefourなど大型の事例も増えている。そして9月19日、「ユニクロ」のファーストリテイリングが導入を発表した。会見では同社代表取締役会長兼社長の柳井正氏が登場し、デジタル化による「情報製造工場」実現にあたってGoogleのクラウドへの期待を語るという入れ込みぶりだ。G Suiteの魅力を知るべく、G Suiteの開発を率いるプラバッカー・ラガバン氏(Google Cloud App部門バイスプレジデント)に話を聞いた。
文書を作り始めた瞬間から
コラボが始まっている
G Suiteはクラウドの生産性スイートだ。フリーメールでおなじみのGmail、それにスケジュールの「カレンダー」、「ドキュメント」(ワープロ)、「スプレッドシート」(表計算)、「プレゼンテーション」(プレゼンスライド作成)、音声対応チャットツールの「Google+ ハングアウト」などのアプリケーションを持つ。これらは全てクラウドで提供され、オンラインストレージ「Googleドライブ」に保存できる。月額、あるいは年額で支払うSaaSで、導入企業数は400万社を超えるという。
この分野はMicrosoft Officeの独断場と言われてきた。オンプレミスで市場を制したMicrosoftは、クラウドでは2011年に「Office 365」を発表している。
だがラガバン氏は、Office 365を始め、Microsoftとは全く違うものと位置付ける。「仕事とは何かをはじめから考え直して作ったのがG Suiteだ。典型的な生産性スイートではない」と言い切る背景には、G Suiteでは作成、コミュニケーション、コラボレーションが同じ場所で、同時に起こるというところにある。「自分がプレゼンを作成し始めると、コミュニケーション担当が“もっとこういうメッセージを”と書き込み、同時に数字などのファクトチェックを担当する別の人を招待してリアルタイムにコラボレーションが進む――これまでのように、作成してある程度完成したものをある人に共有し、フィードバックが入って再度作り直して、次は別の部署に見せて…という作業フローではない」とラガバン氏。「この流れに慣れると、それまでのやり方には戻れない」というほど、効率が上がるのだという。