自由貿易の信奉者にとって、北米自由貿易協定(NAFTA)の改定版は受け入れ難いものだろう。新NAFTAは自動車分野で管理貿易を導入し、企業の海外での権利を弱め、国家安全保障を関税の口実とすることを常態化した。知的財産権や労働者の権利など、新協定に盛り込まれた多くの改善点は、ドナルド・トランプ米大統領が離脱を決めた12カ国の環太平洋経済連携協定(TPP)にもともと含まれていたものだ。しかし、別の観点から見れば、評価は異なってくる。その観点とは、記憶する限り最も保護主義的な米政権の下で、世界の貿易システムがいかにして生き延びたのかというものだ。新協定は、トランプ氏の「米国第一主義」のアジェンダの限界と、既存の秩序の潜在的回復力を示した。なぜそうなったのだろうか。トランプ氏が直面した議会、産業界、自らのアドバイザーたち、そして貿易相手国からの抵抗が、同氏の影響力を抑制したからだ。同じことは将来も起こりうる。
「米国第一主義」の限界、新NAFTAが示す
議会・企業・カナダからの抵抗がトランプ大統領の影響力を抑制
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