ブラック企業が蔓延する日本社会に突如出現し、ネットを中心に話題を集めている「退職代行サービス」。「辞めたくても辞めさせてもらえない…」と嘆くビジネスマンに代わって、その名の通り退職業務を代行してくれるというものだ。現代ならではの新ビジネスの実態に迫ってみた。(清談社 岡田光雄)
ブラック企業の社畜の味方
「退職代行」サービス
働き方改革、テレワーク、労働生産性、ワーク・ライフ・バランス、ハラスメント対策…メディアの見出しに躍るワードだが、ブラック企業で働く者にとっては何の意味もない言葉だ。
いわゆる“社畜”たちは、どれだけ上司からのパワハラや激務薄給な労働条件などに嫌気がさそうとも、新天地に旅立つことすら許されない。退職を希望しようものなら、人手不足や利益減などを理由に「懲戒解雇にする」「損害賠償請求する」といった脅し文句で引き留められることもしばしばである。
こうした時代の中、7月にTwitter上であるサービスが話題になった。その名も退職代行サービス「EXIT」。退職希望者が電話やLINEでここに依頼すれば、本人の代わりに企業に退職したい旨を伝えてくれるというサービスだ。「EXIT」を運営するセンシエス合同会社の新野俊幸さんと岡崎雄一郎さんに話を聞いた。
「クライアントが退職を希望する企業は、中小、零細が多い印象です。業種はITや建設、飲食、介護が目立ちます。介護業界によくある事例ですが、クライアントが退職を希望している旨を電話で伝えると、施設の管理者が『業界狭いからねえ、この業界で次就職できるか分からないよ』みたいなことを言ってくるんです。何でそれを私たちに言ってくるのか、意味がよく分かりませんが、こうした脅し文句が日常的に行われているのでしょうね」(岡崎氏)
現在までに1000件近くの退職を代行し、相談件数は5000件にも上る。料金は、退職1回につき正社員5万円、アルバイトなどその他勤務形態では4万円。顧問弁護士の指導のもと、8月末時点での退職成功率は100%だという。