フランスとギリシャの選挙結果は、緊縮財政への反発にとどまらない。根源をたどれば共通通貨ユーロという「無理」に行き着く。
国家を残しながら単一通貨へと突っ走ったEUは、国家間の競争力を調整するという通貨の機能を失い、深刻な「負け組国家」を生むユーロ危機に行き着いた。選挙結果はその反動である。「市場と国家の相克」に苦悶するEUは、経済統合から政治分断の季節へと移ろうとしている。
ユーロは「分裂の危機」に
見舞われる
これからの欧州を次の3点で注目したい。
1.緊縮財政は政治的に難しくなる。
2.金融緩和圧力が高まる。
3.ユーロが分裂し「北部同盟」結成か。
僅差で勝利をつかんだフランス社会党のオランド新大統領は、その任期5年が「統合欧州のリーダー役」と「フランス民衆の叫び」の間で板挟みになるだろう。
踏み込んでいえば、この5年間にユーロは「分裂の危機」に見舞われるのではないか。フランスは、「北部同盟」としてドイツとともに歩むか、イタリアやスペインと共に「南部同盟」として分離するか、選択を迫られる。
「ユーロ分裂」というと唐突に感じられる読者は少なくないと思う。なぜそんな事態が予測されるのか、以下説明する。
ギリシャで緊縮財政反対を叫ぶ民衆が波状的にデモを繰り返している時、ドイツではフォルクスワーゲンが史上最高益に潤い、景気は沸騰し、地価高騰が話題になっている。域内の格差を表しているのが失業率だ。ギリシャ21.7%、スペイン24.1%、12ヵ国が二桁の失業率に喘ぐ中で、ドイツは5.6%にとどまっている。