中東においてイスラム教の男性が身に着ける民族衣装「ガンドゥーラ」。それに使われる布をトーブというが、このトーブのうち、中・高級品のシェアはある日本企業がシェアの3割以上を押さえているという。いったいなぜ日本企業が中東でそれだけの売り上げを上げているのだろうか?(ライター 相馬留美)
同じ「白」でも
微妙な違いがある
目の前に布のサンプルを出し、小松マテーレの池田哲夫代表取締役社長は嬉々としてこう言った。小松マテーレ(10月1付けで小松精練から社名変更)は、石川県能美市に本社を置く繊維メーカーである。
「この白、全部違うんですよ。分かります?」
写真を見ていただきたい。
確かに左・中央・右では色の違いは分かるが、縦のラインのすべてが別の白だと判別できるだろうか。残念ながら、記者には見分けがつかなかった。
しかし、中東圏の男性なら、この微妙な違いが誰でもばっちりと分かるのだという。
中東の男性が身に着けている服をガンドゥーラという。
じつはこのガンドゥーラはすべてオーダーメード。専門店でトーブと呼ばれる布を購入し、採寸、縫製、仕立てはすべてフルオーダー。特に高級品は、テーラーのような構えの店舗で布が販売され、自分の気に入った布を購入し、そこから仕立てに出す。
布の価格は、低価格品は1ヤード(91.44cm)1ドル以下で、それ以上を中・高級品と呼ぶ。中高級品の場合、ガンドゥーラを仕立てるまでに、生地、仕立て、縫製などを経て、平均的には1着約60ドル程度になる。