アルバイトをきっかけに番組制作の道へ
テレビ制作マンTさん(38歳)

 Tさんは団塊ジュニア世代。アルバイトも競争率が高く、居酒屋のホール、コンビニのレジのアルバイトでも何度も落とされた経験がある。

 当然、就職も倍率が高い。平凡な私大の平凡な成績。それほど人に自慢する経験や特技のないTさんは、多くの企業にエントリーシートを出しても面接までなかなかいくことができなかった。

 内定ももらえぬまま大学4年の夏を迎えていた。そして夏休み前にテレビ局に就職した先輩から、局が主催するイベントを手伝ってほしいという声がかかった。

 就職試験の面接のときに、何か面白いエピソードが披露できたらという思いから気軽に引き受けた。任されたのは、テレビ局の敷地内で夏休み中開催されるイベントの観客の誘導だ。朝早くから、イベント現場で走り回り、日が暮れたらバラエティ番組のディレクターである先輩のアシスタントとして編集室での作業に夜中まで付き合った。

 朝から、カメラマンと出かけたロケから帰ってきた先輩は、テープを細かくチェックして徹夜で編集作業をする。何日も準備をして、ロケも1日かけたのに、そのオンエアは3分も満たないこともあった。それでも、みんなイキイキと働いていて、その目はいつも真剣だ。

「みんなで一つのものを作り上げている。テレビって凄い」。テレビは、見る側であり作る側ではなかった。しかし毎日みんなで過ごすうちに、ここで一生働きたいと思った。

制作会社から番組に派遣されて

 先輩に相談すると「局の募集は終わっているけれど、知り合いの制作会社に聞いてみるよ。でもテレビの世界はきついよ。体調を壊したりして1年続かない人も多い。T君はその覚悟はできている? 俺は、将来地球環境をテーマにしたドギュメンタリーを作りたいという夢があるから頑張れるけれどね」と言った。