日本がテクノロジー王国と言われて久しい。しかしいま、かつて世界を凌駕したメイド・イン・ジャパンの製品が、世界のマーケットで苦戦を強いられている。高い技術力を背景により良いものをつくろうとした結果、高付加価値すぎる製品が増え、むしろそれが世界で通用しない一因にもなっている。「日本のモノづくりはガラパゴス化している」と言われることも少なくない。
たしかに、日本では高付加価値な商品は魅力的かもしれない。だが、僕が活動する途上国はもちろん、急成長を続ける新興国であっても、まだまだ低価格でシンプルなもののほうが求められている。むしろ、日本製品は高くてオーバースペックだと映ることも多い。そこで今回は、高い技術力を持ちながらも世界で苦戦を続ける日本のモノづくりが、大きな可能性を秘めている途上国の市場をどうやったらつかむことができるのかについて考えてみたい。
途上国で求められる
4つの大事なポイント
まず、日本製品といって思い浮かぶものは何か。それはきっと、車、テレビ、オーディオ機器、ゲーム、携帯などのエレクトロニクス製品だろう。日本がテクノロジー王国になったのも、物質的な豊かさを追い求めた70~80年代にかけてで、好調な国内需要に加えて、アメリカ、ヨーロッパなどの先進国の市場にも進出。より薄いテレビ、より多機能な携帯電話、より速いコピー機、より安全性の高い車など、日本のモノづくりは高付加価値の追求に向かっていった。右肩上がりの経済のなか、この成長モデルで非常にうまくいったといえる。
だが、そうした時代から数十年が経ち、時代は大きく変わった。近年ではBOPビジネスという言葉も登場し、日本のみならず世界中の企業が途上国を新たな市場と捉え非常に注目している。しかし、途上国のマーケットを狙うということは、中流層、富裕層をターゲットとしてきた今までとはやり方を根本的に替えなければいけないということ。途上国は貧困層が大半を占めており、彼らには現金がない、電気がない、流通網がないといった制約条件が多い。だからこそこうした途上国の事情に合った製品を開発しなければならない。ではそれはいったいどういうものか。僕は以下のような要素が求められていると考える。
1)ニーズに合っている
2)極端に安い
3)シンプルでわかりやすい
4)壊れにくい
上記を1つひとつ見ながら考えていこう。
1)ニーズに合っている:
これはビジネスでも、社会セクターでも、政府でも一緒だが、「ニーズに対するサービスを提供する」という原点は変わらない。前回の第2回でも紹介した通り、まずは現地の人たちの「生活」を知ることが重要だ。途上国の貧困層の生活レベルを考えると、エネルギー、水、教育、保健サービス、農業などといった日常の生活に密着したニーズをまず理解するべきだろう。極端な話をすると、途上国で3Dテレビは求められていない、ということ。