「だって、ダウン症だと分かっても、私は絶対に産むから。赤ちゃんが生まれて来たがっているのが私には分かるから」

 妊娠初期から5ヵ月目ぐらいまでは毎日出血があり、いつ流産してもおかしくない危険な状態が続いたが、なんとか持ちこたえた。

(赤ちゃんは一生懸命、生まれようとしている)

 次第に大きくなるおなかをさすりながら、「頑張って生まれておいで。お母さん、いっぱいいっぱいかわいがってあげるから。もしもあなたが病気でも構わない。愛してるよ」と毎日話しかけた。

 そして出産。赤ちゃんは逆子で、医師の他、ベテラン助産師と看護師さんらの助けを必要としたものの、破水からわずか1時間で生まれた。

 ベッドの上で、生まれたてほやほやのわが子の顔を見ながら、(ダウン症の特徴はないような気がするなぁ)とホッとしている自分に千晶さんはうろたえた。

 そんなふうに考えてしまうこと自体、差別のように思えたし、頑張って生まれてきた赤ちゃんに申し訳ない気がしたからだ。

 ヨーロッパでは、さらに進化した出生前診断も登場しているらしい。しかし、生殖医療は進化しても、赤ちゃんを迎える社会環境はそれに追いついていない。最愛のわが子に対して「生命の選別」を迫られる出生前診断が抱える残酷さを、千晶さんは決して忘れない。

(医療ジャーナリスト 木原洋美)