耳慣れない病にかかっていると診断され、4時間待ちに耐えてようやく会えた専門医は、PCばかりに目を向けて、自分を見てくれない…。患者の心が折れる瞬間だが、医師も人手不足の中で必死に仕事をこなしている。こうした構造的問題を解決してくれるのが「AIホスピタル」。実は、日本が世界最先端の開発を進めているシステムだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)

4時間待ちのあげくに
対面したのは「患者を見ない医師」

日本の「AIホスピタル」構想は、世界の最先端を行く包括的なものです。診断見落としや誤診もAIの力を借りることで、大きく減らせるとの期待がある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 いきなり個人的な話で恐縮だが、少し前にMRI診断で、ある病にかかっていることがわかった。

 生まれて初めて聞くような病名で、なおかつ効果的な治療法が確立していないということで、しばらく不安な日々を送っていた中、この領域に実績がある大病院を受診できることとなった。

 立派な病院の、立派なお医者さんに相談に乗ってもらえれば不安もスカッと解消されるかも、なんて淡い期待を抱いて待合室で待つこと約4時間。ようやく呼び出された診療室で、それがいかに甘い考えかということを思い知らされた。

 なぜかというと、そこにいたのは「患者と向き合わない医師」だったからだ。

 というと、何やら心構え的なことを言っているのかと誤解されるかもしれないが、比喩ではなく、物理的に患者の方に身体を向けない医師だったのである。

 ご存じのように、最近はどの病院も電子カルテなので、医師は問診しながらパソコンに向き合っている。処方箋も次回の診察予約もすべてパソコンにパチパチと打ち込む。そのため、触診などがない限り、医師は患者の横でパソコンとにらめっこをしながら、「良さそうですね。では、お大事に」となることも珍しくないのだ。

 このような現状に加えて、さらに筆者の場合はMRI診断なので、医師は穴が開きそうなくらいの勢いでモニターを凝視する。その結果、画像診断、カルテ記入、予約と診療時間の9割以上、医師はパソコンと向き合っており、ほとんど筆者の顔を見ることはなかった。そこに加えて、事務的なキャラということもあり、不安が解消するどころか、すっかり気が滅入ってしまったのである。

 その一方で、「こんなのどっかで見たな」という既視感に襲われたのだが、一体どこなのか忘れてしまっていた。

 それを最近、思い出した。「AIホスピタル」だ。