12月2日、東京メトロ千代田線綾瀬駅から小田急線を経て、JR御殿場線御殿場駅まで直通する特急「メトロあさぎり号」が臨時運転される。マニア垂涎のチケットはすでに完売。地下鉄直通特急というジャンルは今後、どのような広がりを見せていくのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

史上初!メトロから静岡県への
直通電車が12月に運行

2008年、小田急電鉄ロマンスカーから始まった「地下鉄直通特急」小田急線と千代田線で始まった「地下鉄直通特急」。誕生から10年が経ち、東武や西武など、他路線でも地下鉄直通特急が検討されるようになった Photo:PIXTA

 2008年3月の運行開始から10周年を迎える地下鉄千代田線直通ロマンスカー60000形「MSE」。東京メトロと小田急電鉄は記念企画として、12月2日に臨時特急ロマンスカー「メトロあさぎり号」を運行すると発表した。

 MSEは普段、「メトロはこね号」や「メトロホームウェイ号」など地下鉄直通列車と、小田急新宿駅からJR御殿場線に乗り入れる「ふじさん号」を中心に運行されている。今回の「メトロあさぎり号」は千代田線綾瀬駅を出発し、小田急線を経由して、JR御殿場線御殿場駅まで3路線を直通運転する。両方の路線に対応するMSEならではの運行ルートで、千代田線から御殿場線に直通するのは珍しい。

 加えて今年3月から「ふじさん号」に変更された「あさぎり号」の愛称が一日限定で復活するという、レア尽くしのマニアックな臨時列車である。こんな列車を鉄道ファンが見逃すわけもなく、原稿執筆時点でツアーは完売済みなのであしからず。

 私事で恐縮だが、筆者は東京メトロ勤務時代に広報担当者として、MSEの発表からお披露目、営業運転開始までに立ち会ってきた。ロマンスカーだからメインはあくまでも小田急電鉄で、筆者は文字通り立ち会っていただけなのだが、小田急電鉄のロマンスカーにかける思いの強さ、MSEに対するマスコミ、鉄道ファン、利用者の期待の大きさを肌で実感したものだ。

 地下鉄直通特急のパイオニアとなったMSEではあるが、特急車両を地下鉄に直通させるアイデア自体は必ずしも新しいものではない。京成電鉄は1960年代に成田山行き臨時有料特急を地下鉄浅草線に直通させているし、1990年にデビューした「スカイライナーAE100形」(2016年に引退した先代車両)の先頭車両にも、地下鉄線内の運行を想定した非常用扉が設置されていた。しかし、地下鉄線内での運用に解決すべき課題が多く、本格的な地下鉄直通特急の運行は、2008年のMSEまで実現しなかった。