共産党政権は高い経済成長を維持することが政権の正統性の根源にあり、成長が鈍化していけば、習近平体制も不安定化しかねない。

 トランプ大統領にとっての「取引」の意味は、自分に好ましい結果を作ることであり、結果が出ないと取引とはならない。

 こうしたことを考えると、貿易戦争を収束に向かわせるためには、中国は単に米国からの輸入を拡大するだけではなく、知的財産権の保護の法制やルールに従った政府補助金への改善など、制度的な面でも米国の要求に応じざるを得ないだろう。

 米国の制裁関税賦課という一方的な措置は非難されるべきだが、もし中国の制度の改善に結びつけば、それはそれで日本にとっても好ましいことだ。

「米ソ冷戦」とは違うが
戦略的対峙はずっと続く

 だが、貿易戦争が当面、収束することは米中の対峙が終了することを意味しない。

 米中は経済・文化・人的交流など幅広く深い相互依存関係があり、「ソ連邦との冷戦」に対比されるような関係になるはずがない。

 冷戦時代には大量の核兵器で相互抑止力が働き戦争は防止されたが、西側がソ連を囲い込む政策をとっていたので相互依存関係はほぼ存在しなかった。

 しかし、今や中国と世界の相互依存関係は強い。ただ一方で、今後、米中間では「戦略的対峙」が続いていくことは間違いがない。

 北朝鮮核問題が米中の協力で解決に向かえば戦略的対峙は緩むかもしれないが、基本的には南シナ海を巡る米国の「航行の自由」作戦はさらに強化されていくだろう。

 トランプ大統領がロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を放棄したのは、条約の対象になっていない中国のINFが米国にとっての脅威になりつつあるという問題意識からだろう。

 果たしてINFを巡り、米中間で軍拡となるのか、それとも相互の制限の方向に軍備管理が行われていくのか。

 こうした米中の戦略的対峙の中で、東シナ海、南シナ海や南・西太平洋で偶発的な軍事衝突が起こる可能性は短期的にも全くないとは言い切れない。

 かつて中国の人民解放軍が習近平主席のインド訪問と時を合わせてインド領に侵入したこともある。人民解放軍が完全に統制されていればよいが、そうではないケースが歴史上も散見される。