虐待のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

古今東西の映画を通じて、社会保障制度の根底にある考え方や、課題などを論じていく連載「映画を見れば社会保障が丸わかり!」。第24回は児童虐待や社会的養護という政策分野を取り上げます。(ニッセイ基礎研究所准主任研究員 三原 岳)

制度改革が進む
児童虐待分野

 児童虐待の分野は近年、さまざまな制度改革が進められています。2000年に初めて児童虐待防止法が議員立法で制定された後、2004年の法改正では保護の対象として、虐待を受けた児童だけでなく、「受けた疑いのある児童」も追加されました。

 さらに、児童相談所の立ち入り調査権限を強化する法改正が2008年4月に実施され、2016年の法改正では市町村や児童相談所の体制強化、国連子どもの権利条約を踏まえた理念規定などが盛り込まれました。言い換えると、深刻な児童虐待事件が後を絶たないため、国として対応策を迫られているのです。

 では、児童虐待や児童養護にはどんな論点や課題があるのでしょうか。往々にしてメディアはセンセーショナルに報じがちですし、「鬼のような母」「児童相談所の対応の遅れ」などが批判されますが、以下は是枝裕和監督が製作した映画『万引き家族』『誰も知らない』、松本清張原作の1978年の映画『鬼畜』などを基に、児童虐待や社会的養護の論点や歴史を考えることにします。