子どもの絵本がだんだんエロくなってきた──。河出書房新社の『せかいめいさくアニメえほん』シリーズで『にんぎょひめ』や『シンデレラ』といった姫系絵本が「萌え過ぎ!?」と、2013年の発行当時から話題になっていたが、最近また子どもの本の「萌え絵」論争が再燃している。一体、何が起こっているのか?

加速する児童書の「萌え絵」化は
古典名作の世界観を壊すのか

萌え絵化する児童書を巡って論争が起きています。「萌え絵」の児童書に眉をひそめる大人も多いが、子どもを引きつけるパワーは抜群。この現実をどう考えるべきだろうか?(写真はイメージです)

「萌え絵」論争への導火線は、2017年から角川つばさ文庫が出した『新訳ナルニア国物語』シリーズだった。

『ナルニア国物語』といえば1950年から1956年にかけてC・S・ルイスが書き上げた名作だ。邦訳は1966年に岩波書店から瀬田貞二の訳で発行され、日本で50年以上読み継がれている。

 この『ナルニア国物語』の原書が著作権切れになり、他出版社から新訳が出るようになった。実は2016年にも、光文社の古典新訳文庫から新しいイラストの『新訳ナルニア国』シリーズが出ている。だが、萌えを全面的に表紙に出した角川つばさ文庫の大変身はインパクトが強烈で、最近増えている児童書の「萌え絵」化、特に古典名作との違和感を訴える往年のファンの間では、子どもに悪影響を与えるという論争にまで発展した。

「萌え絵」化することで、物語の持つ世界観が崩れ、著者のメッセージが伝わらず、結果として子どもたちの感受性や想像力が育たないというのが、「悪影響派」の言い分である。

 角川つばさ文庫は、マンガ的なイラストが人気の児童書シリーズで2009年から刊行が始まったKADOKAWAの児童文庫レーベルだ。古典作品も大胆に萌え絵に進化させ、『新訳ふしぎの国のアリス』など『新訳アリス』シリーズは累計52万部(2018年)のヒットとなっている。この上昇気流に、不況と呼ばれる出版業界が便乗するかのように、絵本や児童書のイラストに漫画家やアニメーターを起用、「萌え絵」化が加速することにつながっていった。