政府がゴリ押ししている入管法改正案が通れば、外国人労働者が大勢日本に入ってくる。しかし、低賃金・長時間労働の劣悪業界に彼らを送り込むことは、徴用工問題や慰安婦問題に匹敵する、新たな人権問題を引き起こしかねない。(ノンフィクションライター 窪田順生)
2025年の日本は地獄絵図!?
増える外国人は社会問題になる
ある朝、目が覚めてテレビをつけたあなたの目に飛び込んだのは、もはや食傷気味となっていたいつもの話題だった。建設現場で日本人上司から執拗な「言葉の暴力」を受けていたベトナム人の若者が、SNSに家族への遺書を残して自殺をしたというのである。
先週は、福祉施設で働く中国人女性が、施設長から「胸揉んでいい?」「結婚しよう」などと迫られ、それを拒否したら「お前らのような外国人労働者はいつでも日本から追い出せるんだからな」と脅された音声をウェイボー(中国のSNS)にアップして大炎上したばかりだ。
今回も、BBCやCNNをはじめ世界中のメディアが、「日本がまた外国人差別」なんておもしろおかしく取り上げるのは間違いない。今や「Black Company」や「sakusyu」(搾取)という言葉は、「karoshi」(過労死)とともに世界に知れ渡ってしまっている。
「外国人差別や低賃金労働を強いる国なんて他にもいくらでもある」と、当初は欧米の理不尽なジャパンバッシングだと主張する評論家も多かったが、次第に皆「あれ?そんなこと言ってましたっけ」という感じで口をつぐんだ。
日本中で無職の若者たちが無差別に外国人を襲う事件が続発し、「外国人は出て行け!」と声高に叫ぶデモも増え始めたからだ。小学校では、「日本の福祉目当てに来るな」と外国人の子どもへのイジメが問題となっている。大阪で万博開催を間近に控えているというのに、日本のいたるところで「外国人への憎しみ」が渦巻いているのだ。
まったくどこのどいつだよ、「外国人労働者」で世の中が良くなるなんて言ってたのは。いや、というより、7年前になぜ我々は、あの法案がどんな未来を招くのかということをもっと真剣に考えなかったのか――。
しょっぱなから一体なんの話だと戸惑う方も多いだろうが、これは2025年ごろ、あなたが目の当たりにしているかもしれない、日本社会の「未来予想図」である。
現在、政府がゴリ押ししている入管法改正案は、低賃金労働の固定化や、社会保障をどうするのかなど、さまざまな問題が発生することが指摘されているが、実はその中で最も早く、誰の目に見てもわかりやすい形で顕在化してくることがある。
それは、「外国人労働者」という弱い立場の方たちに対する、パワハラとセクハラの問題だ。