「このサンマ、そろそろ口を利くんじゃないか」──。水産関係者の間でよく言われる笑い話である。日本では業務用冷凍庫で冷凍された水産物には賞味期限がなく、豊漁のときにまとめて冷凍保存しておくのが通常という。「いつ取れたかの記録がないので、“3~4年もの”の冷凍サンマが出荷され、解凍してパックに入れられた時点の日付で販売される」(業界関係者)ことは日常茶飯事だという。魚のトレーサビリティーが法制化されていない今日では、これは違法ではないのだ。
例えばノルウェーなどの輸入サーモンは、漁獲証明証が添付されトレーサビリティーが確立されているため、消費者に訴求してブランド化しやすい。だが日本の場合、「水産物の素性が分からないので消費者に訴求できず、完全なコモディティーとなってしまう」(勝川准教授)。
前近代的な生産・流通を変えない限り、日本の漁業に将来はない。この袋小路から抜け出す道はあるのか。次項でみていこう。