日本郵船・商船三井・川崎汽船の合弁「日の丸コンテナ船」ONEが2030年までに5.2兆円を投資する理由、海運ビジネス“永遠の課題”克服なるか?Photo by Yuito Tanaka

日本郵船・商船三井・川崎汽船の合弁コンテナ船会社のオーシャン ネットワーク エクスプレス ホールディングス(ONE)の業績が2025年3月期も好調だ。一方で、ボラティリティの高い事業構造には依然として課題が残る。そんな中、同社は総額350億ドル(約5.2兆円)の投資を検討すると発表。日の丸コンテナ船会社は、世界6位の規模からどう存在感を高めていくのか。特集『海運激変! トランプ関税下の暗夜航路』の#2では、変動する市場と対峙するONEの事業戦略に迫る。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)

ONEが最大5.2兆円を事業投資へ
海運の“永遠の課題”を克服できるか

 日本郵船・商船三井・川崎汽船が出資するコンテナ船会社オーシャン ネットワーク エクスプレス ホールディングス(ONE)が2025年3月期も好調だ。上期に紅海情勢が緊迫化し、コンテナ船の需給が再び引き締まったことで税引後利益42億ドル(約6053億円)という好業績を記録した。

 新型コロナウイルス禍の“海運バブル”に次ぐ水準となったが、25年3月期は下期以降、コンテナ運賃が下落している。代表的なコンテナ運賃の指数のCCFI(中国輸出コンテナ運賃指数)は、24年7月のピーク時の2180から25年5月には1104と半減。特需は長くは続かなかった。

 コロナ禍以降、邦船3社に莫大な利益をもたらしてきたONEだが、もとよりコンテナ船事業は運賃の変動が激しいことで知られている。

「業績の振れ幅をいかに抑えるかは、海運業界における永遠の課題だ。ここ数年で構造的に安定性を高めてきたとはいえ、ONEのコンテナ船事業には依然として波がある」

 日本郵船の阿曽智孝執行役員がそう語るように、コンテナ船事業には収益の安定化という課題が常に付きまとう。

 そのような問題意識から、ONEは24年3月に中期経営計画「ONE2030」を発表。その中でONEが打ち出した次の一手が、30年までに350億ドル(約5.2兆円)の投資を検討する方針だ。

 内訳は本業であるコンテナ船事業に250億ドル以上、これに加え周辺分野への投資が最大100億ドルの投資を検討するという前例のない規模の計画になる。

 持続的な成長の実現と、海運業界の永遠の課題の克服に向けて動きだしたONE。

 しかしその前に、米国のトランプ大統領の関税政策という新たなリスクも出現し、先行きの見通しは一層不透明さを増している。

 一体ONEは、この難局にどう立ち向かおうとしているのか。次ページではONEが抱える「不安定な事業構造」と「その克服への処方箋」に迫る。