高過ぎる中間経費
取引記録がなく魚の素性は不明
さらに日本の漁業が大きく世界水準から取り残されていることがある。流通経路の不透明さだ。
日本で流通するウナギの稚魚の約半数が違法取引によるもの──。こんな衝撃的なデータがある。ウナギの採捕(自然の状態の動物を捕ること)には特別許可が必要で、漁業者は採捕した稚魚の数量を水産庁に報告する義務がある。これに輸入した稚魚の数を足し、輸出した稚魚の数を引けば、養鰻を行うために池に入れた稚魚の数量と合うはずだ。ところが、この計算は毎年合ったためしがない。報告された採捕数と輸入数の合計とほぼ同量の“出所不明”の稚魚がいるのだ。
ウナギには、採捕者や採捕日、取引元、販売先など全ての取引を記録し報告する漁獲証明制度は義務化されていない。「ルールを破っても罰則が緩く、横流しが利益につながる以上、無報告や密漁ウナギは後を絶たないだろう」とウナギの保全生態学が専門の海部健三・中央大学准教授は指摘する。
また、日本の魚の価格の70%が中間経費という非効率な流通にも問題がある。水揚げした魚の産地市場での卸売価格が30でも、中間業者の経費が70も上乗せされてしまうのだ。しかも流通過程の取引記録は存在せず、いまや食品には不可欠であるトレーサビリティーの概念が全くない。