弱者救済の切り札、セーフティネット住宅と簡易個室に見る明暗貧困層の「住」を守るための住宅セーフティネット制度は、好ましい形で運営されている。対照的なのは、貧困ビジネスを生み出す厚労省の生活困窮者向け施設や宿泊所だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA

リーマンショックから10年
「住」のポジティブな変化とは

「平成」最後の年末となる本年末は、リーマンショック、大規模な「派遣切り」、そして「年越し派遣村」から10年目の節目でもある。自民党から民主党への政権交代(2009年)、民主党から自民党への政権交代(2012年)を経て、良くも悪くも日本は大きく変化した。今回はあえて、ポジティブな変化に注目したい。

 2008年末の「派遣切り」と「年越し派遣村」は、職と同時に住まいを失う派遣労働者の存在を社会に示した。不安定な状況下で綱渡りのように就労を続けていた人々は、2008年10月から12月までの3ヵ月間における6万人以上の失職によって「可視化」されることになった。

 そこで日本社会は否応なく、対策の必要性を認識した。最も重要かつ本質的なものは、「住」への対策だ。それは10年後の現在、好ましい形で現実化されつつある。その1つが「住宅セーフティネット法」に基づく「住宅セーフティネット制度」だ。

 いわゆる「住宅弱者」が健康で文化的な住を現実的な家賃で確保できるようにする「住宅セーフティネット法」そのものは、リーマンショックの前年にあたる2007年に成立していた。しかし、「制度はあるけれども、住める住宅はない」という状態では意味がない。とはいえ、「大家さん」たちに強制的に住宅を提供させることもできない。

 まずは「大家さん」たちの意識改革を、「まあまあ安心して貸せる」と思える状況の実現とともに進める必要があった。このため、法・情報システム・民間業者との連携のあり方などの見直しや改善が、数多く重ねられてきた。

 2017年10月、2回の改正を経た「住宅セーフティネット法」が施行された。以後、国交省と厚労省は共同で、全国の「大家さん」をはじめ、関連業者や団体を対象に説明会を開催している。「大家さん」たちの団体である「ちんたい協会」(公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会)も、「セーフティネット住宅」として提供される賃貸住宅情報の登録手続きを簡素化するなど、細かな努力を重ねている。