プッシュ型コミュニケーションへの転換必要

 ただ、勘違いしてほしくないのは、確かにサブスクは完成度が7割ぐらいでリリースすることも可能ですが、そこで大々的に宣伝すると残念な体験が生まれてしまい、ネガティブな影響が出ます。

 まずは、導入期でしっかりとチューニングをして、継続期間を伸ばしてLTV>CACという方程式を形にする。その後で、広告費を投入すれば、基本的にはおのずと儲かる仕組みになっていきます。

 AOKIのサブスク撤退が話題になりましたが、本来はあの半年という短い期間でサブスクの成否を判断することは難しいと思いますよ。

 サブスクの場合、ビジネスの評価基準が従来の売り切り型とは大きく異なります。先行投資型で、投資の回収期間は長期になりますので、頭の固い思考だと決算書見て「この赤字事業はなんだ」となってしまいます。初月は大赤字で、1年経ってですらLTV(収益)は1年分しかないわけですから。

 リクープ(投資回収)するまでの期間は、ITサービスの成功事例でも半年以上はかかっていると思います。もちろん、完全新規のビジネスなのか、競合企業がすでにあるビジネスなのかなどで違いますが。

――サブスクの将来はどうなりますか。

 今はITサービス中心ですが、今後は家の中の製品、さらにはリアル店舗ビジネスの順にサブスクは浸透していくと考えています。

 “顧客の個客化”とよく言われますが、家電でも売り切り型のプル型コミュニケーションから、企業がプッシュしていくコミュニケーションに変えていく必要がある。

 壊れそうな家電があったとき、お客さんが自分からお客様センターに電話するのがプル型ですが、このときその製品が壊れそうということを把握して、企業側から「壊れそうですね」とするのがプッシュ型。プッシュ型にしないと、つなぎ留めができません。家電が壊れたら、そのまま他社の製品に流れてしまうかもしれないからです。

 冷蔵庫も電子レンジも、家電の性能自体はコモディティ化しているので、差別化の肝はサービスになる。空気清浄器なら、今までは自分で何千円も払ってわざわざフィルターを買い換えていましたが、「フィルター性能が落ちているので交換しますよ」という月額サブスクにすることもできる。

 そして、そのとき欠かせないのが、その製品の状態を把握するための家電のIoT化。今後、IoTはサブスクの世界でも非常に重要な要素になってくることは間違いありません。