多様な経験や知識を持つ人が多い組織では、物事の解釈のパターンが増えることなどが影響し、組織のパフォーマンスが高くなることが様々な研究から明らかになってきています。たとえば、2002年に米国の経営学者であるバンダーソンらは、個人内多様性が高い人で構成されたチームでは情報共有がスムーズに進行し、パフォーマンスの向上に貢献していることを解明(※1)しました。

 また、2008年にアルバート・カネラらは、多様な経験を持つ人で構成された取締役会を持つ企業の業績が高くなることを解明(※2)しています。

 自主的な学びが評価され、労働市場の流動性が高まれば、組織には多様な知や経験を持つ人が集まります。多様性が掛け合わされてもたらされるもの、それはイノベーションの創出です。

 多様な知や経験を持つ人材が集まれば、知の組み合わせのパターンは増え、それはイノベーションの創出の機会となります。同質化し、同じような知や経験を持つ人々で構成された組織ではこのような現象が起こることは困難です。

多様性からイノベーションへ
「リカレント教育」の重要性

 リカレント教育により、社会人が学びを何度もアップデートすることは、同質化を回避し、イントラパーソナルダイバーシティの高い人材となることを促進します。企業としては、そのような人材を育てる、または採用することで、結果としてイノベーション創出につながることが期待できるのです。こうした観点からもリカレント教育の重要性が認識され始めていると言えます。

 イノベーションを起こすためにもダイバーシティが大切だ――。こういう主張自体は、よく言われることです。しかし、このようなダイバーシティの議論は、属性レベルの多様性に偏っていることがあります。企業には「個人の多様性」を育て、尊重するという発想が求められています。

 逆に言うと、企業が自主的な学びを尊重しない場合、イノベーション創出の機会損失につながっている可能性があります。イノベーションが生まれず、日本企業の国際競争力が低下している要因の1つは、前述したような特定の組織内での経験を重視し、自主的な学びを尊重したり、促したりしない姿勢があるのではないでしょうか。 

 リカレント教育を通して、何度も学びをアップデートし、1人1人が長く、そして意欲的に働けるよう、学びを重視する組織風土を醸成していくことは、日本企業の「イノベーション欠乏症」を治療し、日本が国際競争力を取り戻す処方箋ともなり得るのではないでしょうか。

(パーソル総合研究所 研究員 鎌田陽子)


※1 Bunderson, J. S., & Sutcliffe, K. M. (2002). Comparing alternative conceptualizations of functional diversity in management teams: Process and performance effects. Academy of Management Journal, 45(5), 875-893.

※2 Cannella, A. A., Park, J., & Lee, H. (2008). Top management team functional background diversity and firm performance: Examining the roles of team member colocation and environmental uncertainty. Academy of Management Journal, 51(4), 768-784.

■パーソル総合研究所 「働く1万人の就業・成長定点調査2018」 調査概要

手法:個人に対するインターネット調査
調査対象者:全国男女 15歳~69歳 有職者(派遣・契約社員・自営業含む)
サンプル数・内訳:回収数10000s  性別及び年代は国勢調査(就業人口構成比)に従う
調査時期:2018年2月