持ち株制の廃止は吉と出るだろうか

 持ち株会社制をめぐり、製紙のトップ2社が真逆の対応を取る。

 日本製紙グループ本社は2013年4月に、持ち株会社制を廃止する。主要子会社の日本製紙を存続会社とし、グループ傘下にある一部の事業会社を吸収合併することで重複を解消、コストを削減するのが狙いだ。

 王子製紙は10月、各事業部門を分社化、それらを束ねる「王子ホールディングス」を設立して持ち株会社制に移行する。各事業における責任の明確化や経営のスピードアップを図る。

 国内の新聞・出版、チラシなどの印刷用紙需要はペーパーレス化により縮小は避けられない状況。円高を背景とした輸入紙の急増も2社に追い打ちをかけている。

 一方、商品パッケージや段ボールなどの包装資材は安定した需要が見込める。また、大人用紙おむつ市場は高成長が期待されている。製紙各社はこうした分野へのシフトを急ぐ。

 各事業のバランスに強みを持つ王子製紙は、12年3月期に売上高1兆2129億円、営業利益538億円を確保。篠田和久会長はかねて印刷用紙中心の、従来型の製紙会社から、総合資材メーカーへの脱却を打ち出しており、「社名から“製紙”を取りたい」と訴えていたほどだ。

 対して、印刷用紙分野のウエートが高い日本製紙グループは震災の影響もあり、12年3月期は2期連続の最終赤字。1300人の人員削減や生産能力の15%削減など収益改善を急ぐが、株価純資産倍率(PBR)は1倍を割り込み、市場関係者からは「持ち株制をやめるのは、日本製紙の赤字を他の事業会社との合併によりカバーするためでは」と揶揄される始末。

 同社の本村秀取締役企画本部長は「成長期には持ち株会社はよかったが、低成長時代にはヒト・モノ・カネを一気に集め投資効率を上げるのが有効」と語る。

 だが持ち株制をやめても、肝心な印刷用紙分野で収益を出せる体質に生まれ変われなければ意味がない。リストラを早急に完了するのが先決だ。

(「週刊ダイヤモンド」 柳澤里佳)

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