全部門を巻き込み、筋肉質のアスリート部門に変える

 これらの事例を見る限り、経理部門だけの努力では絶対に早く絞められないのはお分かりいただけるでしょう。経理担当の力の弱い(声の小さな)会社ならなおさらです。改善するには、会社全体すべての関連部署の協力が必要なのです。

 aとbのケースは明らかに、普段の営業担当の仕事が標準化されていないことに起因しています。作業標準を作って、それを徹底すれば間違いなく請求書作成業務は早くなります。

 cとdのケースでは、仕入先や外注先の怠慢で請求が遅くなっているのであれば「翌月3日までに請求書がこなければ、その仕入先・外注先への支払いは翌月に回す」と全仕入先・外注先に通達するだけで早くなるはずです。

 また、社内の担当者の怠慢で仕入単価やeのように外注費が決まっていないために遅れるケースは、仕入担当・外注担当の作業標準を作って業務改善すればよいのです。仕入先・外注先とは当社の仲間として共に成長すべきであり、決して優越的な地位を乱用してはいけません。

 fのケースは、決算期末だけは正確に慎重に在庫評価すべき(時間がかかっても正確性をとる)ですが、普段の月は概算計上してもそれほど影響がないようであれば、迅速性を優先すべきです。

 gのケースは、業務改善してどの程度まで時間短縮できるかがキーですが、翌月3日までにできないようなら、計算締め日を前月末から前月20日とか25日に変更して対処すべきです。

 いずれにしても経営者自らが音頭をとって、月次決算を迅速化するにはどうすればよいか部署ごとに検討して、それぞれ期限を決めて対策をとるべきです。その際に「できません」は禁句で、「どうしたらできるようになるか」を具体的に検討すれば、必ずできるようになります。

 これを機に会社の全部門を巻き込んで、予算管理体制を整備・運用し、すべての部署をアスリート体質の部門に変える良いチャンスだと思います。

 また、月次決算が早まれば、本決算も必ず迅速化します。

 本決算は月次決算の積み上げですし、本決算だけに特殊なのは引当金計算、税金計算、在庫評価、減損など。上場会社では連結決算、株主総会関係実務、有価証券報告書作成業務、内部統制報告書対応が加わるので時間がかかりますが、そうでなければそれほど追加作業は多くありません。決算の迅速化を通じて、強い会社に変えていきましょう。