ユニクロの成長を会計面から支え続けてきた公認会計士・安本隆晴氏に「会社を成長体質に変える数字の使い方」を5回にわたって紹介してもらいます。第2回は、半月遅れになってしまう月次決算書を迅速に仕上げて経営改善につなげる方法をお伝えします。
予算管理にアラートシステムを組み込む
この連載の第1回で説明した予算管理は、予算を作って管理する部門だけが行ない、毎月の役員会で報告すれば完結するというものではありません。経営上大きな問題が発生しそうなときにすぐに警報を出す仕組み、つまり「アラートシステム」を組み込み、関係するすべての部門にただちに働きかけられるようにしなければ意味がないのです。
工場でよく行なわれていますが、不良品が出たときにすぐに「ラインが止まる」「ランプが点滅する」「ブザーが鳴る」などの危機を知らせるための経営管理の仕組みを作ることです。
その「不良品が出た」と判断するのが予算管理部門です。判断基準(アラート基準)は、たとえば月次でプラスマイナス5%以上計画と異なっていたら、すぐに原因を分析し、対策を検討し実行します。それもできるだけ早く警報を発するために、月末近くなったら実績を予測できるようにすべきです。
売上高だけでなく、仕入高、粗利、貢献利益や在庫高なども重要な管理ポイントです。このような会計数字だけでなく、受注数、歩留り率、顧客からのクレーム数などの非会計数字の把握も非常に重要です。
これらの数字の計画値(目標値)を立てておいて、実績値と毎日比べて変化をつかみ、実績が計画値を超え異常値を示したときに関連部門にすぐにアラートを発信し、対策を立てるきっかけとするのです。
ビジネスの基本に「PDCAサイクル」を回す、という考え方があります。
これは経営のどの階層にとってもきわめて重要なことで、経営トップでもミドル階層でも現場(フロント、ローワー階層)でも、各々1人ひとりが仕事をするときに重視すべきことです。
経験的に言っても、これがうまく回転している会社ほど明らかに高成長・高効率です。おそらく時間の進み方も相当に早いことでしょう。
予算作成はこのうちの「P=PLAN」に該当し、実践「D=DO」(実践結果が月次決算の数値)後の予算管理は、「C=CHECK」と「A=ACTION」に該当します。