1年前には、世界経済がようやく金融危機以前の好景気に戻るかのようにみえた。しかし現在、その好景気は、まだ始まりもしないうちに終わってしまったのかもしれない。ただし、間もなくリセッション(景気後退)に見舞われるということではない。国際通貨基金(IMF)は依然として、今年の世界経済の成長率を、まずまずの水準である3.5%と予想している。しかし、これは2回目の下方修正を経た数字である。昨年時点ではIMFは、2010年以来「最も広範な世界同時進行の成長加速」を公言していた。この失望すべき最新の統計が話の本題ではない。景気拡大を最初からつまずかせた一連の失望すべき出来事が本題だ。IMFは2000年代には当たり前だった4%強の成長率復帰を予想し続けてきた。そして、その下方修正を強いられ続けてきた。IMFの最新の予想を使って計算すると、2010〜2019年の世界経済の成長率は年平均3.8%となる見込みだ。これは2000〜2007年の4.4%を下回っている。先進諸国にとっては、2010〜2019年の成長率は、1990年代、2000年代をともに下回る。主要新興国のうち、ブラジルの場合は、2000年代に比べ2ポイントの減速、中国の場合は3ポイントの減速、ロシアの場合は5ポイントの減速となる。