VisaとMasterCardが、5月第2週に揃ってデジタルウォレットサービスの開始を発表した。Visaは「V.me」、MasterCard「PayPass Wallet」という名称だ。
デジタルウォレットとは、クレジットカードなどの既存の支払い方法と連携させ、パソコンや携帯電話からのオンライン支払いを容易にする仕組み。ウォレットを使えば、オンラインショッピングをする際に、サイトごとに毎回発送先情報やクレジットカード情報を入力しなくても、ユーザー名とパスワードを入れるだけで、購入手続きおよび決済が可能になるのだ。
デジタルウォレットと言えば、米国では大手オークションサイトeBay傘下の「PayPal」のほか、Googleウォレットや、Twitter創業者が立ち上げたスマートフォン向けカード決済サービス「Square」がすでに存在する。またVisa、MasterCardと並ぶクレジットカード決済大手のAmerican Expressも、昨年デジタル決済プラットフォーム「Serve」を発表している。
「V.me」「PayPass Wallet」のサービス内容は非常によく似ていて、正直それほど大きな違いはないといっていい。
まず、どちらも自社のカードだけでなく、アメックスやディスカバーなど、他社のクレジットカードや銀行のデビットカードを登録し、支払いに利用することができるオープンなシステムだ。そして双方とも、将来的には、店頭で商品のQRコードなどをスキャンするだけで決済が行なえるような、モバイルアプリケーションを追加するとしている。
違う点と言えば、当初の提携先くらいだろうか。現在ベータ版のV.meは、立ち上げ発表にあたり、アパレルのPacSun.comと楽天のBuy.comがV.meを採用したことを明らかにした。
一方のPayPass Walletは、すでに非接触型ICカードによる決済サービスとして普及しているPayPassの一環という位置づけ。立ち上げ時のパートナーとしては、アメリカン航空と大手書店Barnes & Nobleを発表している。
「じゃあいったい、どこのサービスを使えばいいのか」という疑問が湧いてくるだろう。はっきり言えば、これは現在多くの人々が複数のクレジットカードを選んで使っているのと同じで、自分が使いやすいサービスを選んでいくしかない。
現在はまだ始まったばかりで、各社ともそれほど特色がないが、そのうちに、たとえば割引クーポンの提供、貯めれば特定サイトのショッピングに利用できるポイント提供といった特典が提供される可能性もある。サービス内容の違いもはっきりしてくるだろう。
(岡 真由美/5時から作家塾(R))