習近平国家主席Photo:Reuters

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 弱い動物を捕食する肉食動物は通常、やせていて俊敏であるはずだ。肉食動物が太っていて、動きが鈍く、強い動物を捕食していたら、その生態系(あるいは経済)には重大な問題がある。

 中国の非効率的な国有企業の略奪的行動は同国の政策立案者と米国の貿易交渉官の双方にとって懸念材料となっている。国有企業の行動を制限すれば、両国の経済に資することになるだろう。ところが、習近平国家主席は市場重視の徹底した改革が必要不可欠だということに納得していないようだ。国有企業が中国の民間部門に及ぼしている悪影響(エコノミストはクラウディングアウトと呼んでいる)は鮮明になる一方である。

 中国企業がグローバルな規範を無視することが多い理由の1つに、自国の規則が民間企業の経営を難しくしているということがある。生き残るためには、地方自治体当局者の協力を得るなどして規制の網をかいくぐらなければならない場合もある。筋金入りの国家統制主義者である習主席の下で進んだ中国政府の再中央集権化によって民間企業があまりにも大きな打撃を受けてきた理由もそこにある。つまり、地方の「実験」のための場所、特に硬直化した国有銀行システムを回避する方法を探る場所がなくなってしまったのだ。

 国が後ろ盾についた企業の優位性は銀行融資だけにとどまらない。そうした企業は市場における支配的立場を利用して期日までの支払いを拒否するなどし、民間セクターの納入業者を苦しめている。こうした問題は、現在のように、工業系の国有企業全体の利益成長が減速しているときに悪化する傾向がある。調査会社ガベカル・ドラゴノミクスのシニアアナリスト、トーマス・ガトリー氏は、増加しつつある国有企業の未払金によって2019年には民間企業に事実上、1兆元(約16兆円)の追加損失が出る可能性があるとみている。これは民間企業の昨年の社債とミディアムタームノート(MTN)の発行総額の約3倍に相当する。

 2018年に民間企業の株式を担保とした借り入れが急増した大きな要因に、民間企業への融資とその売上高の両方が縮小したということがありそうだ。支配株主が保有株の50%以上を融資の担保に差し出したという非国有上場企業は現在、1000社を超える。

 これらの企業は全体として、過去3年間に未払金の大幅な増加を記録。その弱い財務体質のせいで資金が潤沢な国有企業の格好のターゲットとなり、国有企業は2018年に62億ドル余りに相当する民間企業の株式をのみ込んだ。

 中国政府指導部はその危険性を認識している。李克強首相は国有企業に対して未払金の迅速な支払いを要求し、さもないとブラックリストに載せると警告。その一方で中央銀行は最近、中小企業への融資拡大に向けた措置を講じてきた。しかし、こうした措置は景気の急減速を避ける上であまりにも軽微かつ遅過ぎた可能性がある。つまり、中国政府は最終的に、民間企業を非常に不利にしてきたシャドーバンキング(影の銀行)に対する現在の厳しい取り締まりを緩和せざるを得ないかもしれないのだ。それができなければ、2009年と2015年に実施されたような大規模な景気刺激策に踏み切らざるを得なくなるだろう。

 一方で中国の経済モデルに大幅な変革を迫っている米国の貿易交渉官の立場にも難しいものがある。1990年代に行われた世界貿易機関(WTO)への加盟交渉のときのように、米貿易交渉官には中国の改革支持派という意外な味方が現れるかもしれない。とはいえ、国有企業は自らに有利な状況を作り出すことにかけては上手(うわて)であり、習主席は依然として国有企業の後ろ盾となっているようだ。

(The Wall Street Journal/Nathaniel Taplin)