前回はお金の話を離れ、長野県・小布施町を例にしながら、幸福論や“ワクワク”といった観点から今後の働き方についてお話ししましたが、今回は私の本業であるお金の話に戻りたいと思います。
最近、金融庁が主導していることもあり、老後に必要な金融の知識と老年学(ジェロントロジー)を組み合わせた『金融ジェロントロジー』という学際的な分野への注目度が高まってきています。そんな流れの中で、老後の資産運用方法についての議論も盛んになってきています。特に最近は、老後、どのように保有資産からお金を引き出すべきなのか(つまり、『定額引き出し』なのか『定率引き出し』なのか、そのときの額や率をどう設定するか)についての議論が盛んになってきているように思います。でも、個人的にはその議論よりも、どのような資産配分で運用すべきかがより大事だと思います。若年層向けのメッセージでも「とにかく積立投資をしなさい!」というメッセージはよく見ますが、どのような資産配分で運用すべきなのかなどの話はあまりされておらず、それと似た状況なのではないかと思っています。
とは言うものの、今は老後の保有資産からの引き出し方法に注目が集まっているので、今回はこのテーマにフォーカスします。老後の引き出し方法に関しては、アメリカでは4%の『定率引き出し』が最適な引き出し方法と言われているようです。でも、この4%の『定率引き出し』というのは日本人、もっと言えば万人に当てはまる正しい方法なのでしょうか?今回はこの方法の正当性を検証していくことにします。
老後の消費額は年齢とともに下がる
保有資産からの引き出し方法を考える前に、そもそも老後にどのように消費すべきかを考えてみたいと思います。当たり前ですが、老後は徐々に生存確率は下がっていきます。無事に65歳に達したオヤジが70歳まで生存する確率は93.6%ですが、80歳は71.1%、90歳だと28.9%と徐々に下がってきます(平成29年簡易生命表に基づく)。ずっと先の老後でしっかりと消費できるように今、節約しても、そのときまでに亡くなってしまったらまったく意味がありません(墓場までお金は持っていけない!)。したがって、通常は生存確率が高いうちに多くの金額を消費することで、老後の人生のQuality of Lifeを高めるというお金の使い方がスマートな消費スタイルになります。つまり、消費額は定年退職直後が最大で、それを徐々に減らしていくのが最適となるのです(ライフサイクル理論)