米国の失業率が50年振りの低水準に近づき、企業が日常的に不満を漏らすほど労働力が不足していることを踏まえると、米国の労働者は交渉力が増し、経済活動の利益の分け前は増えていると思うかもしれない。ところが、そうではない。米国の国内総所得(GDI)に占める賃金・手当の割合は1970年から低下しており、現在の景気拡大でも米国が大恐慌から抜け出そうとしていた時代以来の低水準からほとんど回復していない。米商務省経済分析局(BEA)のデータによると、従業員の賃金・手当がGDIに占める割合は昨年の第3四半期に52.7%に低下。これで4四半期連続の低下となった。1970年には59%、2001年には57%という高水準だった。昨年のGDIに占める賃金・手当の割合が2001年と同水準であれば、米国の労働者の所得は8000億ドル(現在のレートで約88兆5400億円)近く、1人当たりで5100ドルほど増えていたはずである。
労働市場のひっ迫と賃金の伸び悩み、原因はどこに
労働者の交渉力低下などが要因か
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