では、ケアサービスに差はないなら、後は利用料金が問題だ。同じ野村総合研究所の調査では、外部サービス料金を除くと、「介護付き」は月平均で26万2515円なのに、「住宅型」は半額以下の12万2202円になるという。

「介護付き」には施設職員による介護サービスが含まれている。「住宅型」では、介護保険の在宅サービスを外部事業者から求めねばならないが、それでも1割負担なので要介護5でも3万5000円前後で済む。その費用を加えても、約16万円となり、「介護付き」より10万円ほど安い。この低価格は相当に訴求性があるとみていいだろう。

「風の舞」の入居者にも重度者が多く、なお月額の費用は介護保険の1割負担を含めても要介護5の場合11万円前後で足りる。全国的に見ても、ユニット型個室の特養のレベルとほとんど変わらない。つまり、中重度で10万円前後の総費用であれば、特養待機者の受け皿になり、現実的にそのように機能しているといえそうだ。

「住宅型」の都道府県別の定員数を見ると、数のベスト10には第1位の大阪府に次いで、北海道、宮崎、青森、大分、熊本、沖縄など最低賃金基準が低い各県が顔をそろえている。低所得者の多い地方で「住宅型」が存在意義を発揮しているといえるだろう。

「住宅型」の増加は、
「たまゆら事件」も大きなきっかけに

 このような「住宅型」自体の変容が、多くの利用者に受け入れられたことが増加要因に挙げられる。この内部要因のほかに外部要因もある。

「たまゆら事件」である。2009年3月に群馬県渋川市の高齢者住宅「静養ホームたまゆら」で火災が起き、入居者16人のうち10人が亡くなった。批判を受けて厚労省は「認可外有料老人ホームを放置できない。基準に達していなくても、有料ホームの届けを出させて定期的に立入検査する」ことに方針転換した。「届けを出させるように」と指定権限を持つ都道府県や政令市を指導する。

 そもそも有料老人ホームは老人福祉法で「10人以上の老人を住まわせて、食事を提供する」と定義されていた。2006年の改定で、「10人」が消え、食事のほかに家事や介護、健康管理を加え、かつ「そのうちのどれかを提供」として網を広げた。集合住宅に1人の老人が食事だけを提供されていても登録対象になった。