米銀最大手として金融界に君臨するJPモルガンが巨額損失の落とし穴にはまった。金融危機も巧みなリスク管理で乗り切った同行に何があったのか。その余波は金融界全体に及ぼうとしている。

 金融界の弘法も筆を誤ることがある。ただ、その“代償”は業界全体で支払うことになるかもしれない。

 失態を演じたのは、先の金融危機を軽傷で切り抜け、そのリスク管理能力が高く評価されてきた米金融大手JPモルガン・チェース。ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が5月10日、トレーディングの失敗で、20億ドル(約1600億円)もの損失を抱えていることを明らかにしたのだ。損失は市場の動向次第で50億ドルに膨らむとの見方もある。

 20億ドルといえば、AIJ投資顧問による年金消失額に匹敵するほどの大金。ただ、これでJPの屋台骨が揺らぐ事態になるわけではない。

 というのも、図(1)の通り、JPは四半期ごとに40億~60億ドルもの純利益をたたき出す、金融危機後の最高の勝ち組銀行だからだ。2011年には資 産規模で全米トップに立ち、巨額の損失計上が予想される12年第2四半期でさえも、40億ドルの純利益を見込んでいるほどだ。

 では“代償”とは何を意味するのか。それを理解するには巨額損失の裏側を知る必要があるだろう。