点描画パウエルFRB議長は講演で、点描画の代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」の画像を示し、FRBの情報発信について「点」ではなく「全体」に目を向けるよう訴えた Photo by Takahisa Suzuki

 米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は3月8日の講演で、緑、黄、オレンジ、青の点(ドット)が描かれた写真を聴衆に示した。これだけでは何が表されているのか分からない。

 続いて彼はフランスの画家、ジョルジュ・スーラの有名な絵画「グランド・ジャット島の日曜日の午後」を提示した。最初の写真はこの絵画のクローズアップだった。同絵画は点描技法の代表的な作品だが、ドットが見えるほど近づくと意味不明になる。FRBのドットチャートも同様であり、過度にそれに目を向けないでほしいとパウエル氏は訴えた。

 ドットチャートはFRB幹部各自による先行きの政策金利予想をドットで表したもので、ベン・バーナンキ元FRB議長時代に始まった。その中央値は常に大きく報じられてきたが、それは「計画」でも「約束」でもなく、情勢次第で変更される予想の集計にすぎない。中央銀行が未来を見通す水晶玉を持っているなら別だが、現実はそうではない。

 今年のように米中貿易戦争等で経済情勢が大きく変わってしまう場合、ドットチャートで先行きの政策を示すことは特に誤解を招きやすい。パウエル氏はFRBの情報発信全体を見てほしいと言っているが、本音ではドットチャートをやめたがっているだろう。だが一度始めてしまったものはなかなかやめられない。せめてFRBは日本銀行のインフレ予想のように、各自のドットが先行き修正され得る方向性を、上向きや下向きの三角形で示す方がよいだろう。