消えた留学生問題が大騒ぎになっている。しかし、日本政府が外国人労働者を受け入れ始めれば、さらに多くの外国人が「消える」ことになるのは間違いない。そもそも、日本人もいやがる低賃金労働を「外国人ならやってくれるはず」という思い込みは間違っている。なぜなら、彼らが日本に来る動機は間違いなく「お金」だからだ。(ノンフィクションライター 窪田順生)
消えた留学生問題から
予想できる将来の日本の惨状
後からボロボロとこういう話が出てくるということは、これもまだ「氷山の一角」に過ぎないのではないか。
ベトナム、ネパール、中国国籍などの留学生約700人が「所在不明」になっている東京福祉大学で、文科省などが調査を進めたところ、所在不明者は700人どころの騒ぎではなく、過去3年間で1400人にも上ることがわかったというのだ。
報道によると、この「消えた留学生」たちの多くは、授業に出たのはわずか数回で、ある日忽然と姿を消し、学費未納で「除籍」扱いになった者である。
じゃあ、そこでこういう人たちは故郷に帰るのかというと、そうではなく、多くはビザが切れても不法残留し、外食や建設現場など、日本人労働者に敬遠される「人手不足業界」で、労働力として重宝されているのだという。
という話を聞くと、「ほらみろ、こういうことになるから、留学生とかじゃなくて外国人労働者としてしっかりとした受け入れ体制をつくらないといけないのだ!」なんて感じで胸を張る人たちがいるが、筆者の考えはまったく逆である。
こういう問題が起きるから、外国人労働者の受け入れ拡大はやめた方がいいのだ。
今の流れのままでいけば、数百人、数千人規模の外国人労働者が「所在不明」となる。今回の「消えた留学生」問題というのは、近い将来に日本を震撼させる「消えた外国人労働者」のプロローグに過ぎないのである。
今回の一件から我々が学ばなくてはいけないことは、「外国人留学生にはもっと厳しい監視が必要だ」とか、「留学生を受け入れると補助金が出ることも問題だ」というような規制や制度うんぬんの話ではなく、ごくシンプルな「人間心理」である。それを一言で言ってしまうとこうなる。
「人間は時にルールを破ってでも、待遇の良い方向へ流れていく」
留学生が学校を除籍になれば当然、不法残留になる。にもかかわらず、留学生たちは学校から消えた。学費を支払いながら留学生を続けるよりも、バイトでガッツリ稼いだ方がよほど稼げるからだ。待遇の良さが、リスクを上回ったのだ。