成年後見人制度の踊り場成年後見人制度は今、大きな転機を迎えています(写真はイメージです) Photo:PIXTA

認知症の母親の成年後見人に
息子ではなく、弁護士が就くおかしさ

 認知症の人や知的障害者などの生活を支え、かつ財産管理を代行する成年後見制度が転機を迎えている。制度が始まって20年近くたつが、なかなか浸透しないため利用者が伸び悩んでいる。

 認知症の母親を抱えた50代の男性、Aさんは憤まんやるかたない表情で話す。

「なぜ僕ではだめなのか、今でも納得できない」

 自身が母親のために成年後見人になろうと、家庭裁判所に申し立てた。裁判所から案内書を取り寄せて、記入した。母親が認知症であることを証明するため、かかりつけ医のいる診療所に同行して受診し、診断書を入手。

 だが、裁判所からは後見人に選任されなかった。全く知らない弁護士が後見人に就いた。裁判所の職員との間で「母親の預貯金や不動産など資産がかなりあるので、後見人になるのは難しいかもしれない」という会話が交わされていたが、はっきりとした拒否理由は示されなかった。

「どの程度の資産があると、家族の後見人がダメなのか基準を教えてほしいと頼んだが、答えはなかった。後見制度はいい制度だと思っていたのに出端をくじかれ、がっかりです」

 後見人となった弁護士とのやり取りは簡単な書類程度。その後見費用は月に約3万円に達した。「弁護士は、本人の金銭の出し入れにこだわり、介護状況などを含めた日常生活への関心はあまりない。活動実績に比べ高額で驚いた」。

 そこで、後見人を変えようと裁判所に問い合わせたが、「後見人にふさわしくない不祥事を起こしていない。特別の理由がないので認められない」と言われた。

「これほどおかしな制度だとは思わなかった。後見人の選任や後見費用などの基準が公表されないまま、すべて家裁の裁判官の一存で決まってしまうとは」と男性の不満は収まらない。

 後見制度が司法制度の一環であることを改めて思い知らされたようだ。こうした事例は少なくない。