スマホでうつ状態を検知できるかPhoto:PIXTA

 うつ病の患者はそうでない人と比べると、母音をはっきり発音せず、笑顔も弱い。自殺願望のある人では、緊張した声で話す人より息が漏れるような声で話す人のほうが再び自殺を図る可能性が高い。ある種類の統合失調症など精神疾患のある患者は目をそらすとき眉をつり上げることが多い。

 これらは顔分析や音響分析を使って立証された「行動バイオマーカー」の一部だ。研究者はテクノロジーを利用し、顔の筋肉のわずかな動きや声のトーンや言葉の微妙な変化など、人間が気づきにくい変化を測定する。

 カーネギーメロン大学のコンピューター科学准教授、ルイ=フィリップ・モレンシー氏は人工知能(AI)なら「人の顔の表情や行動を感知することが可能で、医師が患者の心の健康をより客観的に評価するのに役立つ」と話す。

 精神疾患の治療では症状の評価は主観的で、患者の自己申告に基づくことが多いため、専門家はAIに大きな期待を寄せている。ただ実用化する際にはプライバシーやコスト、運用の面で問題が生じることは避けられない。

 モレンシー氏はかつては南カリフォルニア大学、今はカーネギーメロン大の研究チームに所属。両大の研究チームは心的外傷後ストレス障害(PTSD)、統合失調症、自殺などの症状について10を超える行動バイオマーカーを立証し、発表した。同氏は現在、複数の研究者と協力し、テクノロジーを使って精神的な健康状態を観察する方法の実験を行っている。