婦人科検診Photo:PIXTA

 毎年、4月24~30日は、世界予防接種週間だ。

 ワクチンで予防できる病気は、子宮頸がん、ジフテリア、B型肝炎、麻疹(はしか)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、百日咳、風疹など多岐にわたる。

 日本で予防接種法に基づき、自治体が主体となって無料、あるいは一部自己負担で定期接種を実施する【A類疾病】は、4種混合ワクチンなど13種類。自己負担の任意接種はロタウイルスワクチン、おたふく風邪、インフルエンザなど5種類が認可されている。

 任意接種は軽く見られがちだが、5歳までにほぼ全ての子供が感染するロタウイルスワクチンを例にすると、すでに世界80ヵ国以上で定期接種化されている。

 任意にもかかわらず、日本国内の接種率は6~7割と高く、自治体が独自に公費助成を行っている地域では9割近くにもなる。

 こうした地域では、小児の重症脱水やロタウイルス脳症による緊急入院数が減ったという報告があり、ワクチン接種が効果を挙げていることは間違いない。子供の健康を守るために定期接種への「格上げ」を期待したいところだ。

 さて、日本のワクチン行政は「ワクチン空白期間」をつくっては再開する悪癖がある。今後「空白期間」が問題となりそうなのは、2013年6月に積極勧奨が中断されたままの子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)だろう。

 大阪府のがん登録データを用いた解析では、2000年以降、子宮頸がんの患者が増加。若年層では検診で見つかりにくい腺がんが増えていることが明らかになった。

 一方、07年から学齢期の女性(13年から男性も対象)にHPVワクチンの公費接種を行ってきた豪州では、28年までに子宮頸がんと診断される女性が、10万人当たり4例以下にまで減ると予測。今世紀中に子宮頸がんを克服した世界初の国になりそうだという。

 豪州でのHPVワクチン接種率はおよそ8割。子宮がん検診の受診率も5割を超える。

 ワクチン接種率が1%未満、検診受診率が4割弱という日本で、「子宮頸がん撲滅」を宣言できる日は来るのだろうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)