南極点到達を果たした阿部雅龍さん
南極点到達を果たした阿部雅龍さん Photo by Makoto Osawa

――凍傷にならないためには、どういう工夫をするのですか?

 南極で凍傷にならないためには、毎日水を5リットル飲みます。南極というのは水分がすごく少なくて、気象的に乾燥していて砂漠と同じ条件なんですよ。だから、呼吸しているだけで、汗をかかなくても水分を失っているんです。気づかないうちに皆、脱水症状になってくるんです。そうすると血液がドロドロになり、末端に血が行かなくなるんですよ。簡単なことなんですけど、怠れば簡単に凍傷になる。だから、水とかお湯をガンガン飲んで血液の循環を良くします。

 あと、スキーを使って歩いている最中は、常に心臓より下に手を置いておきます。心臓よりも手が上だと、手先まで血流が行きにくいんですよ。

 そして、手先まで血液を回すには体のコアを暖めないといけないんです。寒くなってくると、血液は体のコアに集まり始めちゃうんです。だから、体のコアを暖めるため、ベストなどを着込むのが効果的です。

 すごく単純なことなんですけれど、こういったことを知らないと、ごく簡単に凍傷になってしまいます。そういう勉強もしなければいけない。

南極点というのは
冒険を志す人にとって「憧れの場所」

――そもそも南極に行かれたのは、どういう経緯だったのですか?

 僕と同郷(秋田県)の白瀬矗(しらせ・のぶ〈1861-1946年〉・千島、南極探検などで知られた陸軍軍人)という探検家がいまして、小学3年か4年の時に彼のことが書かれた本を読んですごく感銘を受け、それが僕が南極を目指す一番初めのきっかけだったんです。

 また、南極点というのは、冒険を志す人が絶対憧れて行きたいところなんです。経験と体力、そしてお金がなければ到達できません。南極冒険で南極点に到達することの定義は、海岸線から南極点に到達することです。

 実は、南極は観光ルートが開発されており、300万円あれば誰でも南極大陸に立つことができます。1000万円あれば、飛行機で南極点まで行くことができ、近くで1泊できます。車椅子の方でも南極点に行ける時代になりました。でも、記録を作りたい冒険家たちにすると、お金がかかって素人が行くようなルートではうまみがないんですよ。

 冒険は、「人類未踏」だったり、今回のように「日本人未踏」というルートを切り開いていくことにあります。「人の夢をかなえられる」「人には無限の可能性がある」ということを証明していくことに価値があると思っています。