農産物の卸売りや農業支援を手掛けるHappy Quality(ハッピークオリティー、静岡県袋井市)の宮地誠社長は、青果市場に21年間をささげた元競り人である。5年前に起業してからも、「私は、農家ではなくて八百屋です」(宮地社長)という自己紹介が、すっかり定着している。
実際には、農業生産法人のサンファーム中山を傘下に持つ、れっきとした農家でもある。「日本の農家には、消費者や市場のニーズを酌むマーケットインの発想がない。こうした農業業界の常識を覆し、高品質・高単価の稼げる農業を目指したい」と言う宮地社長。農家の枠にとらわれない、壮大な将来ビジョンを掲げている。
現在、夢の実現に一歩近づくための一大プロジェクトが進行している。産業技術総合研究所と組んで、トマトの品質を正確に測定できる新センサーを開発中なのだ。
下の写真を見てほしい。一般的な糖度計では、糖と酸を明確に区別できないため、トマトもレモンも「9.7(度)」という同じ数値が計測されている。糖度計が示す「糖度の高さ」が、必ずしも人が味覚として感じる甘味とは一致していないということだ。それでも、現在の農業業界の常識では、「9.7度」は超甘トマトである(普通のトマトの糖度が4~5度)。小売りのバイヤーも消費者も、この数字をよりどころにトマトを選別してきた。