これによってもたらされる恩恵は、ロボットを協調作業させるためにつないでいた膨大な数の通信ケーブルが不要になることだ。ボッシュが5Gを使って実現しようとしているのは、必要に応じてロボットの配置を自在に変えられる、“ケーブルレス工場”なのだ。
「従来の製造ラインは、単一製品の大量生産に最適化されていた。しかし、未来の工場はもっと柔軟性が求められる」(ミュラー氏)
実際、ボッシュはフィンランドの通信機器大手ノキアのブースで、中国美的集団傘下の独産業用ロボット大手クーカのロボットを5Gで遠隔制御するデモを展示。
同種のデモは、中国通信機器大手ファーウェイのブースでもスイスの重電大手ABBのロボットを使ったものが展示されており、製造現場での5G活用は、国の垣根を越えた連携が進む。
また、ドイツを中心に海外で盛り上がるトレンドが、工場を運営するメーカーが限られた地域の周波数帯を自ら取得し、プライベートな5G無線ネットワークを構築しようとする動きである。
ここでは、メーカーが通信機器ベンダーと直接やりとりして通信網を整備するため、“通信キャリア外し”が起きているという。「セキュリティーや運用で、通信キャリアに依存したくないというニーズがある」と、ある通信機器ベンダーの幹部は語る。
信頼性が求められるロボット制御よりも先に、映像を活用した監視や品質管理から始まると目されている製造業での5Gの活用。未来の工場は着実に近づいている。
トヨタ・SB始動
普及は先も大乱戦
将来の自動運転社会を見据え、トヨタ自動車とソフトバンクが共同出資するモネ・テクノロジーズがついに動き始めた。
三菱地所と共同で、勤務先まで送迎する通勤シャトルバスの実証実験を2月26日から開始。27日には愛知県豊田市で、スマートフォンのアプリでバスを呼べるサービスの実験を始めたほか、3月19日からは横浜市で同種の実験を実施する計画だ。
自動運転は、もはや止められない世界の潮流だ。そのときの主役になろうと、トヨタをはじめとする自動車メーカーから、米ウーバー、中国・滴滴出行などのライドシェア勢、果てはグーグルやアップルといった米IT大手が入り乱れ、主導権争いを繰り広げている。
現時点のモネの取り組みは自動運転ではない。突き詰めれば、スマホのアプリで車を呼ぶだけだ。そしてユーザーとの接点となるこの機能の使いやすさが、ライドシェア大手の武器である。