KDDI、セコム、ベンチャー企業のテラドローンが18年12月に「埼玉スタジアム2002」で行った実証実験。AIが不審者の顔を認証して、近くを巡回していた追尾用のドローンに知らせるという頭脳プレーが成功した。クラウド上のAIが顔認証し、通信で情報を監視センターに知らせたのだ。
ただし、ここで使った通信は4G回線だった。不審者を顔認証する映像の解像度は粗いまま。また、実証実験の当日はスタジアムのイベントが休みの日で、広い球場内にぽつんといる不審者役の男性を見つけ出すだけの作業だった。
しかし、この仕組みを5Gで応用すれば、映像の質は格段に高まってAIが人物特定する精度は上がる。
セコム企画部の寺本浩之担当部長によると「セキュリティーの世界で映像の解像度が高まれば、警備の質は格段に上がる」という。AIの顔認証で4K映像や8K映像を導入すれば、人混みの中でも人物特定が可能。現在、ドローンは航空法で人の頭上を飛ばすことはできないが、理論的には数万人のスタジアムの中でも不審者を割り出す技術が開発できる。
5Gを使ったセキュリティーの応用は、パトロールする端末をドローンだけでなく巡回車両に設置するほか、飛行船による上空100メートルの監視映像と連携することで、さらに精度の高い警備の実現につながる。高度500キロメートルの人工衛星のデータと連携する構想もあり、20年の東京五輪・パラリンピックを前に、5Gの導入によるセキュリティーの可能性は高まる一方だ。
やがて情報収集役のドローンの数は大量に増えていくが、「多数同時接続」の機能を備えた5Gを通じて安全に管理されるだろう。