全7回で、世界トップクラスの海外企業の英語決算書を読み解いて深い話ができるようになろうというこの特集。第5回は、華為技術(ファーウェイ)を取り上げます。米国の目の敵にされているイメージが先行しますが、決算書の数字というファクトでその姿を浮き彫りにします。(ダイヤモンド編集部副編集長 鈴木崇久)
「米国との全面対決」という
先入観なしでHuaweiを見る
今、世界で最も注目を浴びている企業の1社が、中国の情報通信機器大手であるHuawei Technologies(華為技術、ファーウェイ・テクノロジーズ)でしょう。一企業にもかかわらず、米国という世界の覇権国家と全面対決状態にあるからです。
2018年12月、Huawei創業者の娘で最高財務責任者(CFO)を務める孟晩舟副会長が、米国の要請に基づいてカナダで逮捕されたことは世界に衝撃を与えました。その後、米国は孟副会長を起訴。米国の通信機器大手、T mobile US(TモバイルUS)から技術を盗もうとした罪などに問われています。
さらに、米国は安全保障上の脅威を理由として、米政府機関においてHuawei製の通信機器の使用を禁止。それだけにとどまらず、米国はHuawei製の次世代通信規格「5G」のネットワーク機器を使用しないことを他国にも促してきました。
一方、Huaweiと孟副会長は容疑を全面的に否認。また、市場から締め出そうとする米国に対して、セキュリティー上の問題に関する証拠も示さずに販売制限を科すことは憲法違反であると、Huaweiは米政府を提訴しました。
こうした米中の覇権争いや、世界の地政学リスクの象徴のようなイメージがすっかり定着してしまったHuawei。「非上場の中国企業」ということで、「神秘のベール」に包まれているような印象をお持ちの人も多いかもしれません。ですが、実は彼らも決算書をアニュアルレポートの中で公開しているんです。
そこで、特集第5回となる今回は、このHuaweiを扱ってみましょう。「イメージ」は取っ払って、決算書の数字という「ファクトベース」でその姿を浮き彫りにしていきたいと思います。
この記事だけでも分かりやすく解説するつもりですが、決算書の3点セットである財務3表の基本的な読み方について、第1回の損益計算書(PL)と第2回の貸借対照表(BS)、第3回のキャッシュフロー計算書(CF)で詳しく書いています。併せて読んでいただけると、さらに理解が深まると思います。
それでは、Huaweiを包んでいる「神秘のベール」の内側を決算書の力でのぞいてみましょう。