資産格差Photo:PIXTA

 2019年2月に企業年金全般を管轄している企業年金連合会から、確定拠出年金(以下、DC)実態調査結果が公表されました。この実態調査では2017年度のDC実施企業の状況や加入者の運用状況をまとめているのですが、今回はこのレポートからDCの現状をひもといてみることにします。

平均で見ると加入者の運用利回りは高い

 この実態調査によると、DC加入者の通算の運用利回りは平均で2.8%となっています。確定給付企業年金(DB)や退職一時金制度からDCへシフトした企業において、加入者は平均的に約2%の運用利回り(想定利回り)があれば変更前の退職金と同水準になります。現在の運用利回りはこれを上回っているため、平均的には加入者は以前よりも大きな退職金を受け取ることになります。つまり、総じてみれば、DBや退職一時金制度からDCへの移行は、加入者にとってプラスになっているのです。

平均だけを見てはいけない

 ただし、これをもってDCの運営がうまくいっているとはとても言えない状況です。なぜなら、約半分の加入者は元本確保型商品(預金や保険商品)中心で運用しているため、通算運用利回りが想定利回りである2%を下回っているからです。この中には、元本確保型商品“のみ”で運用する加入者も数多く存在しています。このような人たちの運用利回りはマイナスにはなりませんが、ほとんどリターンもないため、確実に2%の想定利回りを下回ることになります。つまり、これはDBや退職一時金と比べて将来受け取る退職金水準が下がることを意味します。