秋山進秋山進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役

秋山 ルール作成にコストをかけるよりも、コンピュータにデータをたくさん読ませて、アルゴリズムのようなものを生み出すほうが結果的には安く品質も良いわけですね。

桑津 ええ。論理ではなく、インプットとアウトプットだけで、ブラックボックスなりに、それなりのものができます。結論がそうなった過程は示さなくていいし、そういうやり方で、判断できる仕事は多いのです。

 AIによらず、大きなくくりのテクノロジーについて申し上げますと、例えば量子コンピュータがどうなるとか、バイオテクノロジーで実際われわれは何歳まで寿命がのびるのかといったことは、われわれも合理的には計算できません(笑)。ただ、ひとつはっきりした潮流があり、それはイノベーションの生まれるところが「発想」から「実装」へという流れになっていることです。

秋山 実際に生活や社会に適用する現場でアイデアが生まれている、ということですか。

桑津 ええ。ここ30年ほど、アメリカの西海岸から、ネットベンチャーが生まれ、新しい技術が世の中に出ました。それこそがイノベーションでしたが、現在は、実装の部分でイノベーションがたくさん生まれています。そしてその多くは中国発のものです。もちろん要素技術はアメリカ由来のものですが。

秋山 中国が実装の部分で本気を出したら、国で一気にやりきる勢いがあることもあって、データのスケールが違いそうですね。他国では、とてもまねできないのでは?

桑津 もちろん新たに生み出す技術の数が多いほうがいいとは限りません。例えば、エストニアの電子政府の試みがあります。国民はスマートフォン1つで、税金の支払い、医療データの閲覧、選挙の投票ができる仕組みが整っています。でも実はそれは、なにも新しい技術を使ったわけではなく、従来ある技術で十分できることです。日本だって、同じことをするのは技術的に可能です。

 ただ、縦割り行政やデータを共有することへの社会の抵抗など、コンセンサスを得られなくて、そういう仕組みにできないことが問題です。従来からある技術を使って、社会的な理解を得てできるようにする、これもまた実装力です。AIにしても同じで、日本では技術がどうこうよりも、受け止め方や定義をどうするかで議論が停滞していると感じています。