中国を選ばずフィリピンで躍進、中堅金型メーカー「現地化戦略」の妙
伊藤製作所のフィリピン工場。伊藤社長の誕生日を祝う誕生会の模様 

フィリピンの大卒新人は
日本人よりも優秀

 給与や待遇次第で転職することが当たり前のため、進出企業を困らせているフィリピンにおいて、1995年に設立以来、勤続21年という社員が10人もいて離職率が低いことから、大企業も視察に来るという金型・精密プレス加工のメーカーがある。三重県四日市市に本社を置く、伊藤製作所である。

 現在、フィリピンとインドネシアに生産工場を持ち、前者が120人、後者が70人の従業員を抱えている。グループで海外売上高比率は20%を超え、フィリピン工場は全利益の30%以上を稼ぎ出してくれる優良企業である。

 同社社長の伊藤澄夫(76歳)はこう語る。

「うちの強みは従業員が辞めないことですね。本社を含めて3社ともほとんど辞めない。2年に1人くらい退職する者もいるが、親の介護などが原因で、会社が嫌で辞める人はいません。だから、一流の技術者が育つんですよ」

 伊藤製作所は順送り金型を製作し、その金型で精密プレス加工を行う専門メーカーだ。取引先は自動車部品メーカーがほとんどで、すべて「ティア1」(1次サプライヤー)の大手ばかりだ。

 順送り金型とは、抜き打ち、穴開け、せん断、曲げ、絞りなどの工程を同時に行うことができる型で、単発型に比べて高速で無人加工できる。ただし、それだけ金型が複雑になるため、製作に熟練が必要となる。時間をかけて技術者を育成することが大事なのである。

 通常、高度な金型は日本人の技でないとつくれないといわれてきたが、伊藤製作所のフィリピン工場には優れた技術者が多い。フィリピンでも複雑な順送り金型の設計・製作が可能になったため、創業7年目に本社技術者が2名帰国できたことで、利益が急増した。