だが、不動産関係者の多くが「リーマンショック直前のピーク時の賃料水準までは戻らないだろう。米中関係の悪化などで企業の業績が急激に悪化でもしない限りは、空室率も急には高くならない」と口をそろえる。
現時点では既存テナントによる館内増床で空室がすぐ埋まり、よそ者は入りにくい。そのため、移転先を求めてさまよう中小企業も出るほどだ。
人材確保や集約化のニーズが高まる中で
ワンフロアが大型化
こうした市場の動きから、不動産関係者の多くは「バブル」という見方に対して懐疑的だ。そこで本特集では、「オフィスビル大開発時代」という表現にしている。
ビルの供給件数を見てみると、過去に比べて少ない傾向にあるが、これはつまり、1棟当たりの面積の大型化を示唆している。最近、各社は業績が上向き事業を拡大する中で、かつては中小ビルに分散していた拠点を1カ所に集約する動きが活発だ。また人手不足が進む中で、優秀な人材確保に向けて、好立地、高機能でワンフロアが広い新築ビルへ移転したいというニーズが極めて高まっている。
そのため、大量供給の時代が終わったとしても、ワンフロアの大型化、新築への移転ニーズはしばらく続くとみられる。こうしたオフィストレンドを、独自に入手、作成したデータに基づき読み解くのが本特集の狙いだ。
今年から東京オリンピック・パラリンピックを経て23年までに、どんな開発が行われるのかをエリアごとに年表化した。大手デベロッパーがひしめく東京駅周辺の大手町、丸の内、日本橋、八重洲エリア。中央省庁が集まる霞が関の隣にあり、東京メトロ日比谷線としては56年ぶりの新駅が注目される、森ビルと森トラストがけん引する虎ノ門エリア。目下、東京急行電鉄グループによる開発が進む渋谷駅周辺エリア。