移転の理由は大きく二つある。
一つ目は、事業継続や人材確保のために最新機能を備えたビルに移転するグレードアップ。二つ目が、分散したオフィスを一カ所に集めて業務を円滑化するための集約だ。
表を見れば、この2パターンに当てはまるケースが多いことが見て取れる。また、都心部の人気エリア、かつ新築ビルに移転が集中していることも分かる。
逆に言えば、都心部から離れているような不人気エリアにあるような古いビルは今後、二次空室が生じる可能性が高くなるだろう。
今年1月、ソフトバンクが、現在入居するJR新橋駅近くの東京汐留ビルディングから本社を移転すると発表した。移転先はJR浜松町駅から海岸の方へ向かう竹芝で、東急不動産が開発するオフィスビルへ20年度中に移転する。
このビルはAI(人工知能)などを活用したスマートオフィスを目指し、シェアオフィス大手のWeWorkがデザインする。その推定面積はおよそ2.4万坪に上るという。JR山手線の外側、しかも海岸沿いということで立地は必ずしも良いとはいえないが、浜松町駅から竹芝エリアを結ぶ歩行者デッキが整備されるなど、利便性の向上が図られる計画だ。
その一方で、二次空室が生じるとみられる東京汐留ビルディングについては、「駅近で立地が良いため、すでに引き合いが多数寄せられている」(住友不動産担当者)との話もある。
実は、その東急不動産グループも今年8月をめどに本社を移転する。移転先は渋谷ソラスタで、現在1棟借りしているTK南青山ビルは丸ごと空室になる。だがここも「すでに引き合いは多い」と、東急不動産担当者は話す。
このように大手企業を筆頭に、積極的な移転が実施ないし計画されている。働き方改革が進む中で、特に既存ビルはこれまで決め手だった立地や賃料だけではない特色を打ち出さなければ、生き残っていけないだろう。