また今回、現地のスマートフォン本体と現地の通信会社の通信SIMカードを利用したのだが、IT先進都市深センでも意外と圏外や電波の弱いところが多く、そうしたところではWeChatPayを使った決済ができなかったり、時間がかかったりする。日本でFeliCa技術を使ったSuicaや楽天Edyなどの非接触IC電子マネーを使い慣れていると、スマートさは感じないし、むしろじれったい思いをすることも少なくなかった。

中国の決済システムは
80%でも十分な完成度

 アプリやシステムの完成度という意味では、日本のそれらに比べるとまだ80%くらいなのかもしれない。ただし、だからといって「日本のほうが完成度が高い」「すごい」「さすが日本だ」などというつもりはない。80%で十分な完成度だからだ。

 それよりもWeChatPayと、同様のアリババのサービスAlipay(支付宝)が、深センだけでなく中国のあらゆる都市で、コンビニや商店はおろか交通機関から露天商まで、あまねく使える決済インフラになっていることのほうが、アプリの完成度よりも利便性を高めている。

 操作性、デザイン、セキュリティなどを考えれば、日本の非接触IC電子マネーの技術であるFeliCaと、それをベースとしたSuicaや楽天Edyなどのサービスのほうが、機能的には勝っている。しかし、ビジネス的にはどうであろうか。

 QRコード決済を初めて実用化したのは中国企業である。加盟店はスマホかタブレットさえあれば、QRコード決済を導入できる。ユーザーは、NFCなどの技術が搭載されていなくても、カメラさえスマホについていればサービスが利用できる。加盟店がサービスを導入するためのイニシャルコストが格段に安いし、決済手数料も安いので、少額決済事業者にも導入しやすい仕組みになっている。

 一方、FeliCaは加盟店側が高額のカード読み取り機を導入する必要があり、スマホの側でも非接触IC対応でなければならない。楽天Edyはかつてソニーグループのビットワレットという会社であったが、加盟店数の伸びとともに設備投資費用がかさみ、収益を産み出せなかった。コンビニなどの大手小売店のカード読み取り機の導入コストを、ビットワレットが肩代わりしていたためだ。