このように“定年のない時代”が到来するなか、問題となっているのが、高齢者の労災だ。労働基準監督署長にすぐに報告の提出が必要になる休業4日以上の労災の17年の発生件数は、30代、40代、50代と年代が上がるほど増え、60歳以上が最も多く3万件を超えた。死亡災害の件数も年代が上がるほど増え、60歳以上は328件と最多だった。さらに、死亡災害について1999年と2016年を比較すると、60歳以上が占める割合は、25%から32%へと高まっている。

年齢別の労働災害発生状況(週刊朝日2019年5月24日号より) 拡大画像表示

 シニアの労災の背景について、中央労働災害防止協会・教育推進部審議役の下村直樹さんはこう話す。

「労災の発生確率が高いのは若年層と高齢者で、特に60歳以上は高止まりしています。高齢者の事故は転倒や墜落が多くを占めています。同じ骨折でも高齢者ほど治るのが長引くなど、休業日数は高齢者ほど長くなります」

 つまり、昔よりも若々しいシニアが増えたように見えても、働く上で加齢による体の衰えは侮れないのだ。筋力や視力、バランス感覚の低下といった身体面だけでなく、脳の情報処理能力も衰えてくる。例えば、ランプが点灯したらボタンを押すような単純作業ならば年齢による差はわずかだが、危険を察知して回避するといった複雑な情報処理に関しては反応時間が高齢者は著しく長くなるという。