スマホ老眼は
生活習慣の改善+点眼で治療!

 さて、質問者の悩みに戻ります。その年齢ではやはり老眼とは考えにくいです。生活状況を詳しく伺いたいですが、スマホを長時間使用する傾向や、画面を至近距離で見る傾向があるようでしたらスマホ老眼の可能性が高いと思います。

 スマホ老眼の治療法の第一は、生活習慣の改善です。

 スマホの連続使用を止め、見る距離を適切にするなどを心がけましょう。至近距離で見ることは学童期の子どもの近視を進めてしまうリスクでもあります。現在、東アジアを中心に、世界中で近視は急激に増え続け25億人ともいわれています。60年前、中国の人口の10~20%が近視だったのですが、今は10代の若者と若年成人の90%近くがそうなっています。また韓国のソウルでは、19歳の男性の96.5%が近視だというデータもあります(出典:Dolgin E. Nature. 2015: https://www.nature.com/news/the-myopia-boom-1.17120)。

 生活習慣の改善以外の治療法として、点眼が挙げられます。

 スマホ老眼は、ピントを合わせる調節機能が一過的に麻痺している状態ですので、調節機能の改善を促す点眼薬が効果を表す場合があります。眼科で処方してもらいましょう。成人の方で3割負担の保険を用いた場合、行う検査の量にもよりますが、5000円でお釣りがくる程度で済むでしょう(初診料、点眼薬代含む)。

ブルーライトは発生源から近いほど浴びる量が多い

 さらにスマホ老眼になりやすい方は、夜間のブルーライトにも注意が必要です。ブルーライトもスマホ老眼と同様に最近、耳にする言葉になってきました。ブルーライトとはスマホやパソコン、ゲーム機、LED照明から発生する青色の光のことをいいます。私たちは普段からブルーライトを様々な場面で浴びていますが、日常生活で困ることはほとんどありません。

 しかし、ブルーライトは発生源から近いほど浴びる量が多いことがわかっており、スマホを目から20~30cmの距離で使用するとブルーライトの影響はより大きくなってしまいます。

 ブルーライトを多く浴びることは、体内リズムの乱れに繋がります(出典:Mortazavi SAR. J Biomed Phys Eng. 2018: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30568927)。ブルーライトは目を通して脳の体内時計をコントロールする場所に影響を及ぼします。日中にブルーライトを浴びることは問題ありませんが、夜間にブルーライトを浴びても脳がまだ昼間だと勘違いしてしまい、体内リズムを調整するメラトニンの分泌が低下します。

 メラトニンがうまく分泌されないと、不眠症、うつ、肥満、高血圧などの疾患になりやすいことがわかっています。ブルーライトが肥満にも影響があるとはびっくりですね。

 スマホ老眼で悩んでいる方に、これらの症状がないか聞いてみると当てはまる方が多くいため、しっかりした対策が必要です。

 私はスマホ老眼の方々には、夜間にブルーライトカットの眼鏡を使用することを勧めています。そうすることで、メラトニンの値が回復し、睡眠の質が改善するという報告もあります(出典:Ayaki M. ChronobiolInt.2016: https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.3109/07420528.2015.1119158?journalCode=icbi20)。

 生活習慣の改善や点眼薬の使用に合わせて、ブルーライトカットの眼鏡を取り入れてみるのも身体全体の調子を取り戻すよい選択肢となるかもしれません。

有馬武志(ありま たけし)
日本医科大学付属病院 助教
鹿児島県出身。2011年日本医科大学を卒業し、同大学眼科学教室に2013年より在籍。また2018年同大学大学院(博士課程)にて学位取得、同年4月より助教として勤務し現在に至る。また2015年より日本医科大学解析人体病理学にも籍をおき、新しい目の治療薬開発に向けた研究にも力を注ぐ。またアイケアクリニックにも非常勤で勤務。 http://www.eye-care-clinic.jp/doctor.html