九州旅客鉄道(JR九州)の大株主である米ファンドが6月の株主総会で株主提案を行うことに対し、JR経営陣が「反対」を表明した。プロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展する可能性もある中、JR側は「対話を続けていきたい」と強調。民間企業でありながら地方の公共交通を守る使命も持つ同社は、難局を乗り越えられるのか。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
「株主とはこれまでも真摯に対話してきたつもり。だから、ここまで個別具体的に言われるとは思っていなかった。引き続き対話に努めたい」
九州旅客鉄道(JR九州)は5月中旬、大株主である米投資ファンド、ファーツリー・キャピタル・マネジメントが6月の株主総会で行う予定の株主提案に対して、反対を表明した。JR九州の青柳俊彦社長は憤りとも取れる口調で心情を語った。
ファーツリーは2016年10月にJR九州が株式上場した当時からの株主で、18年12月に株の大量保有(5.1%)が判明。その後も買い増して19年3月時点で6.1%を保有する。
ファーツリーの提案は、自社株式の取得や取締役3名の選任など6議案に渡った。自社株買いについては、発行済み株式の10%相当、総額720億円を上限とする内容だ。自社株買いにより株式数を減らせば、株主としては株価の値上がりが期待できる。
株主提案に反対も、配当性向は30%に引き上げた
自己株買いについてファーツリーは、「不動産資産を主としつつ有利子負債のないJR九州の貸借対照表は構造的に非効率で、自己資本利益率(ROE)を下げている」とし、資本コスト改善につながるものと主張する。
これにJR側は鉄道を維持更新するための設備投資や、駅ビルなどの不動産・ホテルの開発に多額の資金が必要なことを理由に、「短期的な株主還元は財務体質を顧みないものだ」と反論した。
一方で、「物言う株主」に応えようと、19年3月期の配当性向を30%に引き上げ、昨年より10円増やし1株当たり93円とした。20年3月期は総還元性向を35%に引き上げる。