後進育成の努力が実り
「うちの若手は日本一」

 ポリシーは「高い志で、研究も臨床も、熱意を持って解決を目指す」。その基本は、浜松医科大学時代の恩師・佐藤篤彦先生によってたたき込まれたものだ。

 谷口先生はこれまで、アレルギー疾患に関するいくつもの発見をしてきたが、最初の発見も同大の付属病院でぜんそく外来の患者を診る中でなしとげた。

「ぜんそく発作を起こしている患者さんにステロイドの治療薬を注射したところ、大発作になってしまったのです。それが結局ステロイド過敏の機序を見つける研究のきっかけになりました。もしあの発見がなかったら、世界中で今も、多くの患者さんが亡くなっていたと思います。

 診療しているだけでは、助けてあげられる患者さんはせいぜい数十人単位です。でも同時に研究も行って新しい診断や画期的な治療法を見つければ、世界中の数百万人に寄与できる。非常に意義深いことだと思いました」

 ステロイド剤は、正しく使えば非常にいい薬で、約70年も前から、ぜんそくの治療に使われてきた。少量を、吸入という方法で肺に直接届ける「吸入ステロイド薬」の普及で、現在は、重い副作用はだいぶ抑えられるようになってきている。

 しかし使い方には相変わらず注意が必要で、過敏症状を起こす患者がいるほか、少量の服用でも長期間にわたると骨粗しょう症や腎不全を引き起こし、患者の命を縮めることもある。

「骨がもろくなったせいで背骨や大腿骨を骨折し、車イスで連れて来られる患者さんの余命はわずか3年~5年です。20代なのに骨粗しょう症になり、咳をしただけで首の骨が折れて運ばれてくる患者さんもいます。こうしたリスクは、ぜんそくの治療ガイドラインには掲載されていません。

 アレルギー疾患の患者さんは多いので、アレルギー科を標榜している病院やクリニックは全国にありますよね。でも実は、日本には、アレルギーについて専門的な教育を受けたドクターはほとんどいません。僕は独学で学んできました。医学部にそうした講座がないのです。かつて救急科や総合内科、感染症科もそうでしたが、近年、行政がテコ入れするようになり、講座が設けられ、体制が整ってきました。アレルギー科も各大学で講座が設けられるようになれば進歩するはずです」